研究領域 | ナノスピン変換科学 |
研究課題/領域番号 |
26103003
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白石 誠司 京都大学, 工学研究科, 教授 (30397682)
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研究分担者 |
勝本 信吾 東京大学, 物性研究所, 教授 (10185829)
齋藤 秀和 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究チーム長 (50357068)
浜屋 宏平 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90401281)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | スピン変換 / スピン軌道相互作用 / スピン流 / 半導体 |
研究実績の概要 |
白石グループでは、ブロードバンド強磁性共鳴によるシリコン中のスピン緩和の大小を定量的かつ迅速に測定することに成功するとともに、シリコン中のスピン緩和機構を運動量緩和の観点から整理しなおすことに成功した。また、トポロジカル絶縁体における相反性のあるスピン変換や、金属超薄膜を用いた外場によるスピン軌道相互作用の制御と非線形にスピン変換の実現など、論文化には至っていないものの新たなスピン変換物理の萌芽となる成果も得ている。浜屋グループでは強磁性ホイスラー合金とゲルマニウムの高品質界面を介したゲルマニウムへの電気的なスピン注入において、従来よりも40倍ほどのスピン信号強度を得ることに成功し、その変換効率の高さを実証した。また、低温から室温付近までのスピン変換を実現できた結果、ゲルマニウムにおけるスピン緩和現象も明確になった。齋藤グループでは昨年度に引き続きスピン発光素子の発光部となる (110)GaAs/AlGaAs量子井戸の高品位化を筑波大大野グループと共同で進めた。その結果、結晶品位および発光強度の指標となるキャリア寿命が同量子井戸としては最高値となる 10 ns を達成した(従来は 3 ns 程度)。また、新たな取り組みとして、半導体トンネル障壁を有する磁気トンネル素子を基本構造としたサラウンドゲート型FET素子の作製と動作実証に東大と共同で挑み、ゲート電界による出力電流変調の実証に室温で成功した。勝本グループではドーピングにより逆向きのRashba有効磁場を持つ縦型スピントロニクス素子について,Dresselhaus効果との組み合わせによるスピンフィルター効果を発見した。また、量子ホールエッジ状態において、非断熱遷移を通してスピン歳差運動を起こし電気的に検出できることを確認した。数原子層MoS2のナノメッシュ構造で強磁性の発現を確認し、MoS2のスピントロニクス素子への応用可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A02班の目標としていた半導体/強磁性体界面におけるスピン変換や半導体におけるスピン輸送など、おおよその目標は達成できている。更に領域全体の目標の1つである非線形なスピン変換の発見についても、白石グループでその萌芽となる成果が得られている。A02班内部、さらに他の班との連携研究も着実に進行しており、順調に研究は推移している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である30年度は、引き続きこれまでの成果をさらに止揚する新規な成果の達成と、萌芽が見られる新スピン変換物性現象を正確に理解することを目指す。さらに領域目標の1つである統一的学理の理解に到達できることも目指す。班内・班間連携もこれまで通り活発に推進する。
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