研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
26105013
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
松下 智裕 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 制御・情報部門, 部門長 (10373523)
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研究分担者 |
八方 直久 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (30285431)
窪田 昌史 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (60305787)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | アルゴリズム / 計算物理 / 物性理論 / 原子配列解析 |
研究実績の概要 |
像再生班では5年間の研究期間で3つの課題を掲げて研究を進めている。今年度、下記に示すように【課題4】を追加し研究を進めた。 【課題1】「共通3D解析プラットフォームの構築」では、既に中核となるソフトウェア「3D-AIR-IMAGE」が完成し、他の班への提供を行っている。今年度は必要なアップデートを行った。特にスパースモデリングに基づいた新しい像再生理論のSPEA-L1の改良を進め、明瞭な像が得られるようにした。プラットフォームを利用した共同研究が進み、論文などの成果を挙げつつある。 【課題2】「高精度低ノイズ計測系開発」林Gと連携して、蛍光X線ホログラフィーの測定ソフトウェアの改良を進めた。加えて、中性子ホログラフィー用に測定システムの開発も進めた。また、木下Gと連携し、阻止電位型電子ネルギー分析器の開発を行った。これは立体角±45°の光電子ホログラムを分解能約2000で一度に測定可能にする。この制御電源を開発した。 【課題3】「4D空間の高解像度再生」大型計算機にSPEA-L1を移植し、並列化計算で短時間に高精度原子像を計算できるようにした。 【課題4】「ホログラムのデータ処理技術」2016年度にこの課題を追加した。掲げた内容として「ホログラムの結晶方位の推定」「束縛エネルギーのピーク分解による原子サイト別ホログラム取得の高度化」「実験で得られたホログラムの断片をつなぎ合わせる処理」であった。これらの実装を完了した。他にも、ホログラフィーではノイズ処理、バックグラウンド処理、対称操作処理などを、球面状の関数として扱いつつ計算をする必要がある。これは特殊なデータ処理であり、独自にアルゴリズムを考える必要がある。この機能をプラットフォームのプラグインとして実装し、他研究班に利用できるレベルに仕上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【課題1】「共通3D解析プラットフォームの構築」については、ソフトウェアは当初より早く完成し、他研究班に利用してもらっている。このため多くの共同研究成果を挙げつつある。また、英文マニュアルを整備するなど、海外のユーザーも利用できるように努めている。 【課題2】「高精度低ノイズ計測系開発」は、H27-H29年度末の研究期間を予定していた。木下Gと連携して開発を進めている阻止電位型エネルギー分析器開発では予定通り今年度に制御電源が納入され順調である。また、林Gの蛍光X線ホログラフィー計測系、中性子計測系の構築は予定より早く構築が進み、実際の実験での利用が始まった。また、今年度には計画当初に想定されていなかった蛍光X線ホログラフィーのノーマルモード計測についても、システム構築を開始した。 【課題3】「4D空間の高解像度再生」はH28中盤からH30にかけて行う予定であるが、すでに大型計算機へのBarton法の移植は完了し、SPEA-L1の移植が始まっている。 また、予想より早く研究が進んだため、新しく【課題4】「ホログラムのデータ処理技術」を設定した。実験データから、原子像再生を行うまでには、色々な抽出処理、合成処理、ノイズフィルター、対称操作処理を施す必要があるが、これをグラフィカルユーザーインターフェースで簡単に操作できるようになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
【課題1】「共通3D解析プラットフォームの構築」のソフトウェアは、ほぼ完成した。今後も引き続きバージョンアップを続けていく。機能が多くなってきたため、マニュアルの整備とチュートリアルの開催を重点的に行う。 【課題2】「高精度低ノイズ計測系開発」は林Gと連携して蛍光X線ホログラフィーでノーマルモードの計測と解析が可能になるように開発を進める。また木下Gと連携し、阻止電位型エネルギー分析器用の制御電源について、このソフトウェア開発をすすめ、実際に実験に利用できるようにしていく。 【課題3】「4D空間の高解像度再生」として、SPEA-L1のアルゴリズムの研究を進め、さらに高精度に原子像が再生できる理論を構築しつつ大型計算機への最新アルゴリズムの移植を行っていく。特に、複雑な物質系の測定が進み、解析技術の高度化が望まれている。ホログラムは球面上の関数として定義されるが、測定条件によっては、観測できない領域が発生する場合や、多重エネルギーのホログラムが測定できない場合など、欠損したデータから、像再生を行う技術について要望がある。SPEA-L1の適用限界などを理論的に明らかにしていき、測定条件へのフィードバックなどを進めいく。 【課題4】「ホログラムのデータ処理技術」として、ノイズフィルターの高度化をはじめ、蛍光X線ホログラフィーのノーマルモードのデータ処理などが新たに必要となる。これらのデータ処理技術の開発を進めていく。
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