計画研究
低いエネルギーの光から高いエネルギーの光へと変換する機構としてフォトン・アップコンバージョン(UC)が知られている。近年、これまで利用が不可能であった太陽光の可視・近赤外領域を利用してUCを起こす機構として三重項消光 (TTA)が注目されている。現在、TTA-UCの研究は盛んに行われており、増感剤として白金またはパラジウムオクタポリフィリン(Pt またはPbOEP)、発光体として9,10-ジフェニルアントラセン(DPA)またはその誘導体の組み合わせがよく用いられている。この組み合わせは溶液内で太陽光レベルの光を照射することでTTA-UCが観測されている。その反応効率はおよそ30%と高く実用化に耐えうる反応効率である。しかし、実用化するためには空気中でも安定してTTA-UCが起こる分子システムの提案・開発が必要であるが、提案されている系の多くは反応効率が低く実用化には至らない。本研究では、TTA-UCの反応機構を分子レベルで解明するため、はじめに最も反応効率が良い溶液系においてTTA-UCの分子メカニズムを解析した。TTA-UCが起こる際の拡散と衝突について分子動力学計算を用いて分子間距離の分布や拡散係数を見積もった。また、電子移動速度を電子状態計算を用いて見積もった。溶液系では、誘導体中のアルコキシル基を介した電子移動どの増加、および、溶液内で近距離にいる分子の存在確率の増加が誘導体の効率を上げている要因であることが判明した。次に固体系でのTTA-UCの反応効率を解析した。固体中ではTTAに加え、三重項励起子のエネルギー移動(TTET)が起こるため、2つの過程の比較を行った。TTETの反応時間はμsオーダーであり、律速反応であることを明らかにした。また、固体中では結晶構造に起因するTTETの次元性と励起子の寿命のバランスで、反応の効率が支配されていることを提案した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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