半導体ナノ微粒子(SNPs)および多励起子の関与する以下の研究を中心に行った。 1.CdSeコアを種々の厚みを持つZnSシェルで覆ったCdSe/ZnS core/shell QDsにアクセプター分子(メチルビオローゲン)を接合したハイブリッド系HNsの電子移動反応は,高励起状態からのホット電子移動が存在すること,またその反応速度はシェル厚みに余り依存しない事を解明した。さらに,CdTe QDsにアクセプター分子としてフラーレンC60を接合したCdTe QDs-C60 HNsの電子移動反応は,(1) バンド端1S(e) からの電子移動がCdTe QDsの直径の増加と共に遅くなること,(2) 高励起状態からのホット電子移動が存在し,その速度定数はQDsの直径に対して極大が存在すること,等の新たな現象を見出した。 2.有機-無機ペロブスカイト結晶のレーザー発振に関する顕微過渡吸収分光のダイナミクスをレート方程式を用いた数値計算によってシミュレーションした。その結果,多励起子生成の初期段階で,ホットキャリアの拡散速度が通常の励起子拡散よりも一桁近く大きい事がレーザー発振に重要な役割を果たしていることを見出した。 3.CdTe QDsに光応答分子(DAE)を接合したHNsにおける光応答の励起波長依存性を解析したところ,HNsではDAE開環体の吸収がない波長でも閉環反応が進行する事を見出し,DAEとQDsとCT的相互作用が重要な事を明らかにした。 4.自己集合を示す新規ペリレンビスイミド(PBI)色素を用いる事により,SNPsを配列構造制御する事に成功した。 5.テトラセンおよびペンタセン誘導体の二量体,三量体の分子内一重項分裂(iSF)をフェムト秒可視~近赤外過渡吸収分光で解析したところ,三量体のiSFは二量体とほぼ同程度であり,中間体経由のmechanismを提案した。
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