研究領域 | 高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築 |
研究課題/領域番号 |
26107006
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
河合 壯 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (40221197)
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研究分担者 |
中野 英之 室蘭工業大学, 工学研究科, 教授 (00222167)
東田 卓 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00208745)
高見 静香 新居浜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70398098)
谷藤 尚貴 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80423549)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / 光反応量子収率 / 連鎖反応 / ドミノ反応 / 放射線検出 |
研究実績の概要 |
分子の励起状態と光化学反応に関する科学は自然界の光化学反応の理解やエネルギーや情報技術の基盤学理として研究が進められてきた。本研究では光反応量子収率が100%を大きく超える高効率光反応系の構築と光反応剤の高効率化に向けて分子材料システムの開発を進めてきた。平成29年度においてはこれまで進めてきた高効率の連鎖開環反応を示す分子に関する分子構造と反応条件および連鎖反応性に関する相関について研究を行った。化学酸化剤、光反応、電気化学反応あるいは放射線反応などの方法により閉環体の酸化反応が進行すると、連鎖反応により連続的に開環反応が進行することが見いだされた。有機化学酸化剤による電子移動に伴う反応収率が100000%に達する高効率反応系を吸収スペクトル変化から確認した。さらに光によるトリガーを考慮して光酸化反応に適した分子構造としてフェニルチオフェン骨格を導入した分子について、クロロホルムや塩化メチレンなどの含塩素溶媒を用いる条件で光照射に伴う退色反応が見いだされた。また光照射後暗所に保持しても持続的に退色反応が継続し、酸化連鎖退色反応の進行が認められた。反応条件を検討した、開封後の保存期間が管理されていない溶媒では再現性が極めて低いことが見いだされた。この結果、開封直後の溶媒を利用するなどにより再現よく光反応性を認めることが可能となり、2000%を超える光反応量子収率を見出した。さらにこの反応系に対してX線を照射することで持続的な退色反応が確認された。照射線量に応じて消色反応の反応量や反応速度が変化することが見いだされた。これを利用して放射線の線量を検定する放射線センサーとしての有用性が認められた。1mGrレベルの低線量においても再現性良く消色反応が確認され、有機分子系としては世界最高レベルの高感度放射線検出が可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに当初計画の100%を超える光反応量子収率を達成し、その再現性についても十分な確証を得た。さらに放射線検出機能についても新たに見出し、その実効性を検証することに成功しており当初予定を大きく超える成果を得たといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き超高感度光反応系の構築に向けて研究を進めるとともに、放射線検出系に関する検討を加速する。再現性についてはまだ十分とは言えない面もあり、早急に最適条件を見出し、論文発表へとつなげる。固体表面での自己組織化が確認されたことから異性化についても再現性良く見い出すことが可能と期待される。また光反応系に関しては実験条件を詳細に検討して反応量子収率の向上を図る
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備考 |
河合研究室HP
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