研究領域 | 高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築 |
研究課題/領域番号 |
26107009
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
横山 泰 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60134897)
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研究分担者 |
生方 俊 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00344028)
川村 出 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20452047)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / 吸収スペクトル / 全光制御 / エナンチオ選択性 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、①フォトクロミズムによって酸を発生させ、その酸によって別のフォトクロミック化合物の吸収スペクトルの位置を制御する、②蛍光ユニットを側鎖に持つジアリールエテンのフォトクロミズムにより、蛍光性をオンオフする系を創生する、という二つの研究を計画し、実行した。 ①については、フェナントロリンを両側のアリール基に有する化合物の環化体の吸収帯を、スルホン酸ユニットを持つスピロピランのフォトクロミズムによって生じるプロトンがフェナントロリンに付加して塩を形成することによってシフトさせることに成功した。スピロピランは熱可逆なフォトクロミズムを示すので、熱戻り反応が起きるとプロトンが再びフェナントロリンからスピロピランに戻り、シフトは解消された。本研究の成果を論文投稿し、掲載が決定したが、本報告書提出時点では、まだページ番号やDOIは決まっていない。 ②については平成26年度から27年度にかけて行った実験で、ジアリールエテンの片方の側鎖に蛍光性のビスアルコキシフェニレンエチニレンユニットを持ち、他方のアリール基の側鎖としてこれと空間的に重なるような位置にペンタフルオロフェニル基を有する化合物を合成した。その結果、フォトクロミズムに伴って蛍光発光波長は変化しないために目で見ても蛍光の変化は感じられないが、蛍光の発光スペクトル形状が変化する系を構築できた。本研究の成果の論文発表を行った。 ③さらに、第三のテーマとして、ヒト血清アルブミンの中でジアリールエテンが起こすエナンチオ選択的フォトクロミズムについて、優勢に生じるエナンチオマーの絶対立体配置を三つの化合物について決定した。X線結晶構造解析、CDスペクトル、および分子間の相互変換を用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度に計画した①②について、共に論文発表を行うことができた。さらに、本年度の計画には入れていなかったが、ヒト血清アルブミンをテンプレートとした3種類のジアリールエテンのエナンチオ選択的フォトクロミズムについて、その主に生成するエナンチオマーの絶対立体配置を確定することができた。これは現在論文執筆中である。 従って、当初計画した以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は、①で行ったフォトクロミック化合物の物性の全光制御を拡張して、他のフォトクロミック化合物についてさらに多くの性質を全光制御できる系を構築する。また、②に関連して、構造を簡略化して合成の効率を上げられる化合物を設計し、これらについて側鎖間相互作用に基づく物性制御をさらに拡張して行く。また、③として、ジアリールエテンのエナンチオ選択的フォトクロミズムの計画を立て、この現象の一般性を確認してゆく。
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