研究領域 | 高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築 |
研究課題/領域番号 |
26107011
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
朝日 剛 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (20243165)
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研究分担者 |
石橋 千英 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (10506447)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ結晶 / 有機結晶 / 固相光反応 / 高強度レーザー / 結晶相変化 / 時間分解分光 |
研究実績の概要 |
本研究では、複数分子の光励起によって初めて誘起される協同的反応・構造変化として、①光反応結晶相変化と②高密度励起光反応に着目し、100nmサイズのナノ結晶についてその反応ダイナミクスとメカニズムを解明を目的とする。本年度は①として、ジアセチレンナノ結晶のトポケミカル光重合過程について、②として高強度ナノ秒レーザー照射による色素分子ナノ結晶の相変化について取り組んだ。 ジアセチレンナノ結晶の光重合過程:再沈殿法により作製したナノ結晶コロイド(平均サイズ100nm)の光重合反応過程において、紫外光照射開始からポリマーが生成し始めるまでに一定の誘導期間が存在し、その期間内に結晶中のモノマー量が30%程度減少することが分かった。また、誘導期間およびポリマーの生成時間が励起光強度に反比例して短くなった。単一ナノ結晶の光散乱分光測定により、誘導期間およびポリマー生成速度がナノ結晶ごとに異なることが示された。 ナノ結晶のナノ秒レーザー結晶相変化:液中レーザーアブレーション法により作製した銅フタロシアニンのナノ粒子コロイドが、高強度ナノ秒レーザー照射により吸収スペクトルが変化し、熱的に元の吸収に戻ることを見出した。この変化はナノ粒子の結晶相変化によるものと考えられる。このスペクトル変化は繰り返し起こり、パルスレーザーでのみ誘起できるフォトクロミック反応といえる。また、高強度ナノ秒レーザー励起によるナノ結晶の過渡的な温度上昇を、時間分解蛍光スペクトル測定により評価する実験手法を提案し、ペリレンやアントラセンのナノ結晶について、強度1mJで過渡温度上昇が50℃程度であること、数10mJ以上で過渡的融解が起こることが示された。 フェムト秒顕微過渡光散乱分光装置の開発: プローブ光の後方散乱光をモニターすることで単一有機ナノ結晶のサブピコ秒時間分解吸収分光を可能とするシステムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジアセチレンナノ結晶のトポケミカル光重合過程および高強度ナノ秒レーザー照射によるナノ結晶の相変化の2つのテーマともに、当初計画していた研究実施内容を順調に進めることができ、当初期待していた実験結果が得られた。次年度以降予定しているより詳細なメカニズムの検討を進めるうえで、十分な基礎的知見が得られた。 当初計画していなかった、ジアリールエテンナノ結晶の多光子フォトクロミック反応およびナノ結晶のレーザー誘起相転移の構造解析に関する領域内共同研究の実験を開始し、興味深い実験結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に沿って研究を進める。次年度は、結晶サイズの効果、励起レーザーのパルス幅や強度の影響を検討し、さらに単一粒子顕微分光、時間分解分光による実験を重点的に行い、反応機構の解明を目指す。また、我々が得意とする顕微蛍光分光、顕微過渡吸収分光技術を活用して本新学術領域内で共同研究を積極的に進める
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