研究領域 | 高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築 |
研究課題/領域番号 |
26107013
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小畠 誠也 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00325507)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 結晶 / フォトクロミズム / 複合光応答 / 結晶成長 / 相転移 / ジアリールエテン / 光誘起形状変化 / フォトメカニカル効果 |
研究実績の概要 |
本研究では、フォトクロミックジアリールエテン結晶およびアモルファス固体が複数の光励起(複合光励起)によって複雑に光応答する分子システムを構築し、フォトメカニカル新現象の創出とメゾスコピック領域における実働的な光駆動マイクロマシンの創製を目指している。平成29年度には、主に、フォトメカニカル挙動の照射波長依存性、可逆的熱的相転移を伴うフォトメカニカル挙動の新現象の解明、および光誘起ねじれ挙動の照射方向依存性について検討した。具体的には、光誘起屈曲挙動が照射強度にどのように依存するかはメカニズムの解明だけでなく、新たな新現象の解明に繋がる。実験の結果、屈曲の速度は照射光強度の一次に比例することがわかり、個々の分子のフォトクロミック反応に伴う分子構造変化が結晶変形に協同的に起こっているのではなく、付加的に起こっていることを明らかにした。次に、さまざまなジアリールエテン結晶の光誘起形状変形を研究する過程において、ヘキシル基を有するジアリールエテン結晶が紫外光照射の際に可逆な相転移を起こすことを見出した。紫外光照射により屈曲し、その際に熱的相転移により結晶が伸長する。結果的に、紫外光照射のみで屈曲の往復運動を行い、可視光照射で再び屈曲の往復運動が観測された。フォトクロミック反応により相転移温度が低下し、複雑な運動となっている。さらに、リボン状の結晶において、光照射方向を変化させるという新たなアプローチによりフォトメカニカル挙動の制御を試みた。リボン状結晶に紫外光を照射すると、結晶先端に向かって照射するとねじれが起こり、角度をつけて光照射するとCylindrical helixタイプのらせんが起こり、結晶に対して直交方向から照射すると少しねじれを伴った屈曲が起こることがわかった。このように同一の結晶に照射する光の方向を変えることで、フォトメカニカル挙動のモードを制御することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、光応答性フォトクロミック分子結晶の結晶成長、光誘起結晶変形、相転移などの固体機能物性変化を複数の励起光あるいは時空間を考慮した励起によって、これまでにない新しいフォトメカニカル現象の開拓とメカニズムの解明を行っている。平成29年度には、光誘起結晶屈曲挙動の照射波長依存性を明らかにし、メカニズムの解明を行った。また、可逆的熱的相転移を伴う光誘起屈曲挙動の新現象を解明し、さらには光誘起ねじれ挙動の照射方向依存性を明らかにし、フォトメカニカル挙動のモードを制御することに成功した。このように、当初の計画以上に進展した結果が得られた。これらは本研究の計画している複合光励起であり、新たな屈曲現象を見出し、メカニズムを明らかにしており、今後の研究を推進するための重要な成果と考えられる。これらに関しては論文執筆済みあるいは論文執筆投稿中であり、平成29年度の既発表学術論文11報、学会発表69件を合わせ、十分な成果を発表しており、当初の研究計画以上の成果を達成している。さらに、特筆すべき点として、Elsevier のChemistrySelect においてFront coverとして、またACSのJ. Am. Chem. Soc. においてはinside cover として研究成果が紹介された。さらに、国際共同研究も積極的に行い、学術論文2報を報告している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、光応答性フォトクロミック分子結晶の結晶成長、光誘起結晶変形、相転移などの固体機能物性変化を複数の励起光あるいは時空間を考慮した励起によって、これまでにない新しいフォトメカニカル現象の開拓とメカニズムの解明を行っている。これまで、順調に研究計画通り進捗しており、最終年度にはさらに以下の研究を進め、全体の成果のまとめとしたい。すなわち、(1) 結晶成長場の構築、(2) 光応答性分子および集合体の設計、(3) 光励起方法、(4) 特異な結晶変形、相転移、(5) メカニズムの解明、(6) 実働機能システムの構築を行う。
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