研究概要 |
伊東はDMBAを用いて従来困難とされていた前立腺癌の実験モデルを確立し前立腺癌の顕在化要因の解析を行った結果,高コレステロール食の影響は無かったが、テストステロンは潜在癌の顕在化要因として極めて重要である事を見出した。一方,三次元コンピューター画像解析により肝発癌の初期に発生するGSTーP陽性single cellの多くはそのまま存在し一部のみがfociへ移行する事を示した。また、各種発癌物質により誘導された大腸,膀胱,前立腺,肝臓の前癌病変ならびに癌細胞おいて,共通してDMABに対するDNAーadductsの形成が阻害される事実を見出した。この事実はいかなる発癌においても,潜在癌細胞にはDNA-adductの形成に対し一定の抵抗性のあることを示したものと考える。日浅はDHPNを用いてラット甲状腺癌の促進因子として3ーamino-1,2,4-triazol,potassium chloride,potassium iodide,4,4'-diaminodiphenylmethane,2,4-diaminoanisole sulfate等を見出した。松本はアンドロゲン依存性マウス乳癌(SC115)を使用し,無血清培地でも著明なアンドロゲン誘導性増殖を示すclone(SC-3)を確立した。その系を使用し,SCー3のアンドロゲン依存性増殖は,アンドロゲンがその受容体と結合しFGF様増殖因子を産生し,これがSCー3の増殖を促進することを示した。立松はMNNGにより誘導されたラット胃癌において,癌の発育と進展に伴い胃型癌細胞より腸型への分化形質変異を見出し,潜在癌の顕在化要因の一つに癌細胞変異が関与している事を示した。北川は肝癌好発系マウスより不死化肝細胞培養系を樹立し,これらの細胞には活性化rasが非発現である事を見出した。またSV40ーT遺伝子導入ラット肝での多段階的癌化過程を形態学的に明らかにした。江角はヘテロサイクリックアミンにより誘発されたラット肝癌において低頻度にHーrasの13番目のコドンに変異を見出したがKーrasおよびNーrasにはともに構造変化がない事を示した。
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