研究概要 |
この研究は,わが国において,近い将来,80年以上の長伐期施業によるスギ優良大径材の生産が,現在よりもますます増加するであろうことを想定し,そのため,これまであまり明らかにされていなかったスギ高齢林分に関する生理生態学的諸特性を種々の角度から明らかにしようとするものである。本年度は,岩手大学農学部附属滝沢演習林に,研究分担者全員が集まり,87年生スギ林分の伐倒調査を行った。スギの現存量は,幹が179.4,枝が24.5,葉が17.4ton/haであり,幹材積は697.5m^3/haであった。これらの値は,昨年,高知県本川村奥南川国有林での80年生スギ人工林の調査結果よりも,やや大きい値であったが,幹の現存量だけはほぼ同じ値を示した。このように材積に対して幹乾重が少さかったのは,供試木の半数が凍裂木であり,その含水率が高く,そのため比重が少さくなったと考えられた。一方,広葉樹の現存量は,幹が0.7,枝が1.0,葉が0.1ton/haであった。スギの成長経過の解析から,樹高27m前後,胸高直径40cm前後のところに成長分岐点があることが分った。すなわち,この林分では,林齢が40年生頃までは樹高ならびに肥大生長とも極めて盛んで,材積生長も現在でも衰えを示していないグル-プと,林齢が30年生頃から,樹高ならびに肥大生長とも次第に衰えをみせはじめ,材積生長が60年生以降で横ばい,または低下して行くグル-プのあることが明らかになった。これらについての詳細な結果は現在とりまとめ中である。このほか,各分担者が,それぞれの研究據点で標記研究課題に沿った各種の調査を行った。すなわち,東北地区では,リッタ-トラップの調査,四国地区では同化,呼吸量の測定,九州地区では樹冠の形態的な調査を行い,生理生態的な林分の生産構造と形態的な樹冠との関係解析ならびに施業への応用の可能性について検討した。来年度はさらに研究を深め,全体をとりまとめる予定である。
|