研究概要 |
本研究は,金属原子の気相中での衝突における「光・衝突協秦過程」を観測し,この過程の詳細な機構を明らかにするとともに,光吸収断面積の絶対値,原子間相互作用ポテンシャル,衝突誘起遷移双極子モ-メントなど,衝突錯体の基礎特性に関する精確なデ-タを決定することを目的としている.平成2年度には次のような成果を得た. (1)Baー希ガス衝突系の光吸収過程について, Baー希ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe)衝突に起因する光吸収帯をBa原子第二共鳴線(6s^2 ^1S_0ー5d6p ^1P_1)のウイング,および同原子の禁制線(6s^2 ^1S_0ー6s7s ^1S_0)の近傍に観測し,各衝突系についてこれらの吸収帯の換算吸収係数の絶対値を決定した.また,第二共鳴線のウイングに見られるサテライトスペクトル構造を解析し,遷移の始状態と終状態の間の差分ポテンシャル曲線について,その極値近傍の形状に関する知見を得た. (2)BaーBa衝突系の光吸収について (2a)BaーBa衝突の際の一光子吸収の結果衝突対双方のBa原子が励起される過程(対吸収過程)を観測し,この過程に起因する光吸収帯の絶対換算吸収係数を決定した. (2b)BaーBa衝突によって広がったBa原子共鳴線(6s^2 ^1S_0ー5d6p ^1P_1)のウイングスペクトル形を精確に測定した.その結果,このスペクトル形はBa原子間の共鳴相互作用よりもむしろvanーderーWaals相互作用に強く支配されていることが分かり,さらに,(2a)と(2b)の光吸収帯を与えるそれぞれの衝突過程は互いに強く結合し影響しあっていることを明らかにした.
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