研究課題/領域番号 |
01450069
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉浦 博 東京大学, 教養学部, 教授 (80012334)
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研究分担者 |
中澤 英雄 東京大学, 教養学部, 助教授 (30012511)
池田 信雄 東京大学, 教養学部, 助教授 (40083290)
恒川 隆男 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (60022258)
杉橋 陽一 東京大学, 教養学部, 助教授 (50015278)
平子 義雄 東京大学, 教養学部, 教授 (90030387)
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キーワード | 日常的・私的文学 / 神話概念の転換 / 歴史概念の転換 / 新保守主義 / 「新主体性」文学 / 美的主体性 / ポストモダン / 歴史家論争 |
研究概要 |
われわれの研究テ-マにおける骨子は、時間概念における、歴史の中の目的論的性格をもった直線的なありかたの行方を仔細に追求するというものであった。つまり単純化して言うと、神話的な遅れた段階を徐々に理性の力によって克服して、ユ-トピア的な神々しい状態に達する、というのが、その基本パタ-ンになろう。1930年代から精力的な活動を開始したいわゆるフランクフルト学派の理論において、第一に、構成員はその思想において決して一枚岩的な統一性を示していたわけではなく、第二に、例えば神話や理性の概念は決して一義的ではない、といった留保はいくつかあるにしても、こうしたいわば最終目的に一直線に向かうかのような考え方に対し、1970年代以降(旧)西ドイツに登場したコンスタンツ学派と称される人々や、ブル-メンベルクやマルクヴァルトなど、イデオロギ-的には保守主義によるアンチテ-ゼが提出された。神話概念のネガティヴなところがポジティヴに変えられ、究極的な歴史の目的に至るということは措定されない。 この転換は、当科研グル-プによって初年度から鋭意研究され、なおかつ研究グル-プのメンバ-たちの集中的な討論の対象であった。メンバ-は以下に示すキ-ワ-ドをそれぞれ担当して、上に述べた基本的事象を中心にして具体的かつ周辺的な事象を個々に研究に当たった。しかし本研究は、1989年秋ベルリンの壁崩壊に遭遇し、研究上の枠組み自体もう一度考えるという機会をもつことになった。前年度の研究調査書で報告したように、本研究に関わる現代の思想家のみならず旧DDR系の文学者たちのその後の動向をあとう限り蒐集に当たった。かれら文学者たちの受けた影響は、生活上のことだけではなく、その文学的内容にまで及んでいる。パソコンによって集約的にされた情報は、メンバ-相互のあいだで能率的に回され、討論に付された。
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