本年度は、(1)ハ-グ証拠収集条約をめぐる裁判実務に関して、加盟各国の実態調査とその取り纏め、(2)わが国におけるハ-グ送達条約による送達実務の調査・検討、および(3)前年度および今年度の調査研究の報告書の作成、の三つを研究課題とした。 (1)に関しては、証拠開示(ディスカヴァリ-)の制度を有するアメリカ合衆国と他の諸国との間で、証拠収集について認識の相違があり、これを原因とする「司法摩擦」が発生しているため、これに関する裁判例の調査・検討を進めた。また、1989年4月にハ-グで開催されたハ-グ国際私法会議の特別委員会における審議についての情報・資料の収集を試み、わが国が同条約を批准した場合に生ずるであろう実務運用上のいくつかの問題点について加盟各国の状況と比較して考察した。 (2)については、最高裁判所事務総局および法務省における聴取り調査を実施し、実態の把握に努めた。また、同じくハ-グ国際私法会議でのわが国の公式見解の表明等について外務省を通じて資料の収集をおこない、検討を行った。 (3)の研究の纏めとして、現在、各論の諸問題について論文を執筆中であり、総論については準備段階の討論を行っている。
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