本年度は、当該研究課題の基礎資料の収集(再収集)及び点検に当たることを旨とし、他方で、当該研究課題の背景をなす枠組(T史分析枠)設定のために、現代日本の保守外交分析の基礎的考察に多くの時間をさいた。そのために、第1に現代(戦後国際社会)における“戦争と外交"の位置づけの画定に意を払い、その基礎研究を戦後保守外交史の交報につなげようとした。その書物として出たのが、「現代の戦争について」(宇沢編、岩波講座、第6巻)である。第2に、現代の秩序(国際関係秩序)と、国際倫理の問題について、基礎的考察を進めた。それは、戦後保守外交の基礎をなす、パクス・アメリカ-ナの基礎構造を明らかにするのに少なからぬ貢献をなしうるものとする。その業績として、「国際秩序と正義」(『思想』所載)、及びベイツ著(翻訳)『国際秩序と正義』である。また、国際秩序の倫理とイデオロギ-についての考察をなす上で、戦後社会主義論の考察を「東欧生命と社会正義」(上・中・下)で行なった。 しかし、とはいえ、戦後日本外交と占領、安保についての史的考察はなお、十分な結実を生むに至らず、わずかに日米関係考察の一環として、「FX摩擦について」の対訣を雑誌に掲載したことに止まる。 ただ、歴史分析について、日本で入手不能な多くの資料について、文献検索サ-ビスを通じて入手できたこと、雑誌『再建』について、他の予算により入手できたこと、及び、雑誌エコノミストに掲載された記事を中心に、日本の金属複合体の基礎にかんする史料査察関係の歴史像の画定のために、多くの日常時交態勢を進めた。また、研究会「占領史研究会」での研究発表を行なった。 本年度収集した史資料を基礎に、来年度の成果につなげうるはずである。
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