木質構造の他構造と著しく異なる点は接合の“あそび"と局部塑性にある。とくに木質構造の自由度の拡大によって出現した各種立体架構では極めて重要な要素で、他構造にない特異な分野となる。本研究はこれらの新しい木質構造において避けがたい“あそび"と局部塑性の構造体の耐力や力の伝達に及ぼす効果に関して実験および確率論的に検証をしようとするものである。明らかになった点は以下のとおりである。 1)“あそび"有する構造の変形の進行に伴う力の分布、伝達についてモデルによる検討を行った。接合部の延性(ductile)、脆性(brittle)の組み合せと“あそび"の分布を想定し、部材を直列、並列のモデルに対して、変形曲線、最大耐力と許容耐力に関する安全性評価の考え方を整理した。 2)スギ通直材の接合部に釘、粘弾性性状の異なる2種の粘着剤、接着剤を用いた梁およびT字型モ-メント抵抗型の試験体の剛性、固有振動数、減衰などを比較した。とくに接合方法で減衰性状に差異がみられ、他の弾性に関係する要素は短時間の小荷重では差異は少なかった。 3)柱、梁、筋かいからなる壁体のせん断剛性、振動性状を実験し、仕口部分を回転バネに置きかえた剛体線形振動解析で仕口部分の寄与が大きいことを明らかにした。回転柔性係数、伸縮柔性係数を導入した半剛節ラ-メンモデルによる線形振動解析を行い、さらに、仕口部分の“あそび"による変形の非対照性についてバネ質点モデルを用いた非線形解析を行い、実験結果の傾向を予測できることを示した。 4)スギ角材を軸組材としてボ-ルジョイントによる接合部を有した矩形の立体フレ-ムモデルの振動試験を行った。接合部の“あそび"のフレ-ムモデルへの影響として構造の変形の進行に伴う力の分布、伝達を比較するには、モ-ダル、伝達関数に関する解析手法が有効であった。
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