研究課題/領域番号 |
01470030
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
河嶌 拓治 筑波大学, 化学系, 教授 (50041760)
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研究分担者 |
田端 正明 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (40039285)
小堤 和彦 筑波大学, 化学系, 講師 (50177250)
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キーワード | 銅(II)-ピリジン錯体 / 銅(II)-アミノ酸錯体 / 活性化剤 |
研究概要 |
元素の触媒作用を利用する接触分析法においては、分析法の感度や選択性を増大させるためにしばしば活性化剤が使用される。活性化剤は金属イオンと錯形成する配位子がよく用いられるが、活性化剤の役割には不明なことが多く、金属イオンと錯形成することによって著しい触媒作用を示すと考えられているに過ぎない。本年度は、活性化剤錯体の触媒作用について、主として構造化学的な観点から研究を行った。 銅(II)の接触分析法では、しばしばピリジンが活性化剤として使用される。水溶液中における銅(II)-ピリジン錯体の構造解析をEXAFS法により行った結果、モノ-、ビス-、トリス-、テトラキス(ピリジン)銅(II)錯体はすべて歪んだ八面体構造であることが明らかとなった。エカトリアル位置の銅(II)イオンと水和水分子の酸素原子あるいはピリジンの窒素原子との結合距離は、高次の錯体ほど若干長くなる傾向が見られるのに対して、アキシャル位置の銅(II)イオンの水和水分子の距離は、高次の錯体ほど顕著に長くなるという非常に興味深い結果が得られた。 2価遷移金属イオンとポルフィリンの生成反応はアミノ酸の共存により非常に加速されるが、そのうちで銅(II)-アミノ酸錯体の触媒作用に関しては、EXAFS法や分光光度法によって水溶液中における銅(II)-アミノ酸錯体の構造化学的デ-タを得た結果、銅(II)-アミノ酸錯体は水溶液中ですべて歪んだ八面体構造をとっていることが明らかになった。銅(II)イオンと第一配位圏にある供与原子との結合距離は、アミノ酸の種類によらず、またモノ-、ビス-、トリス錯体中においても変化せずほぼ一定であった。このことからアミノ酸錯体の触媒作用は銅(II)イオン周りの配位水が置換され易くなることにより発現するのではなく、アミノ酸側鎖の置換基とポルフィリンの疎水性相互作用が重要であることが明らかとなった。
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