研究概要 |
前年度の成果をふまえてANP(Atrial Natriーuretic Peptide:心房性ナトリウム利尿ペプチド)の生理作用を解明するため研究を進めた。 1.先天性高血圧ラットを用いて精製心筋ミトコンドリアを調製し,酸化的リン酸化能,Caイオン輸送能,超微細形態変化,酵素消費活性等に対するANPの影響を検索し,正常ラットとの差異を検索した。 2.虚血心におけるANPの酵素消費抑制効果を検定した。このためにラット潅流心を使用し,心筋ミオグロビンやチトクロ-ム類の酸化還元スペクトルを継時的にモニタ-した。 3.細胞内レベルでの作用を解明するため,ミトコンドリアを精製して,酸化的リン酸化能に伴う呼吸状態の変化に及ぼすANPの影響を調べた。その結果,ミトコンドリアそのものにANPを作用させた場合においては酸素消費抑制はほとんど見られないことが判明した。すなわちANPはミトコンドリア直接には作用せず,恐らくANPのレセプタ-が存在するとされる細胞膜を介して引き起こされる細胞内反応の結果ミトコンドリアの酸素消費が抑制されるものと推測された。 4.虚血潅流心におけるリン化合物(ATP,ADP,AMP,クレアチンリン酸)の変化をNMRにて解析した。ANPを作用させるとその虚血型パタ-ンはよりゆっくり進行し,虚血状態解放による回復も早かった。 5.脳内ホスファタ-ゼカルシニュ-リンの酵素活性に及ぼす直接・間接のANPの作用についても研究した。
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