研究概要 |
非特異的炎症性腸疾患、とくに潰瘍性大腸炎の病態への腸内細菌叢の関与を明らかにする目的で、潰瘍性大腸炎患者の病変部大腸粘膜より分離したBacteroides vulgatus,Bacteroides fragilis,Bacteroides ovatus,Bacteroides distasonisおよびEscherichia coliの各菌株より菌体外膜蛋白分画をBlaserの方法により抽出し、患者血中に見いだされる抗体活性をEnzyme-linked immunosorbent assayで検討するとともに、菌体蛋白をsodium dodecylsulfate polyacrylamide gel electrophoresisに展開して、患者血清で認識される対応抗原をwestern blotting法にて検討した。 Bacteroides ovatus,Bacteroides distasonisについては、健常対照群と比較して有意の患者血中抗体の上昇は、検討した各5株の菌株には見いだされなかった。 これに対して、Bacteroides vulgatusでは、western blotting法にて70Kdalton、32Kdalton、26Kdaltonに潰瘍性大腸炎患者IgG型抗体で特異的に認識される菌体外膜蛋白抗原が同定され、26Kdalton蛋白はIgA型抗体によっても特異的に見いだされた。同様に、Bacteroides fragilisでは27Kdalton菌体蛋白抗原が、さらにEscherichia coliでは46Kdalton、38Kdalton、32Kdaltonの菌体蛋白抗原が潰瘍性大腸炎症例で特異的に認識されることが明かとなった。 この結果の一部は、Second Yokohama International Seminar(1989,9,21;Yokohama)で既に報告した。また、VIth International Congress of Mucosal Immunology(1990,7,22-27;Tokyo)にて、これまでの結果を取りまとめて報告する予定である。 現在、Clostridium ramosum等、他の菌種についての同様の検討を行うとともに、これまでに見いだされた対応抗原蛋白の精製を行っている。
|