研究概要 |
35例の卵巣癌での ^<125>IーEGFをligandとするbirding studyにて20例(57%)でEGF受容体の発現を認め、とくに漿液性腺癌では19例中14例(74%)と極めて高い陽性率であった。そこでヒト卵巣漿液性腺癌由来のcellーline,SHIN3を用いてその増殖のメカニズムを検討した。SHIN3細胞からRNAを抽出しpoly(A)^+RNAとして、northern blot analysisを行ない、EGF受容体とそれに結合しうるligandの遺伝子発現を検討した。その結果TGFαとEGF受容体のmRNAを認めたが、EGEのmRNAは検出されなかった。次に蛋白レベルでの発現をTGFα、EGFおよびEGF受容体のモノクロ-ナル抗体を用いて検討したところ、やはりTGFαとEGF受容体蛋白を認めるものの、EGFの発現は認めなかった。 ^<125>IーEGFをligandとするbinding studyではKd=2.9×10^<ー10>Mとhigh affinityな単一のbinding siteを認め、受容体数もほぼ8×10^4と豊富であった。以上の結果はSHIN3細胞におけるTGFα/EGF receptor autocrine機構の発現を示唆するものであるが、次に細胞培養系を用いてこのautocrine機構の増殖における意義を検討した。TGEαは有意にこの細胞の増殖を促進しなかったが、このautocrine機構のantagonistであるTGEαとEGF受容体のもモノクロ-ナル抗体によりdose dependentな細胞増殖抑制がみられた。わずか1μg/mlのTGFα抗体で有意な増殖抑制がみられ、しかもこの抑制は10nMのTGFα添加で完全に解除された。以上の所見なSHIN3細胞においてTGFα/EGF受容体オ-トクリン機構が発見しており、この機構が細胞増殖に重要であることを示唆するものである。さらに、primaryな卵巣腫瘍でEGF受容体が高率に発現しているという結果は、これらにおいてもTGFα/EGF受溶体オ-トクリン機構が発現している可能性を示唆するものである。
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