研究概要 |
卵巣癌患者より得られた組織におけるEGFレセプタ-解析では35例中20例(55%)に特異的なレセプタ-の発現を認め,組織型との関連では粘液性腺癌に比べ漿液性腺癌での発現率が有意に高く70%をこえていた。In Vitroにおける検討では,患者から得た組織においても,all lineを用いての検討でも,EGFレセプタ-を発現する卵巣癌ではtrans forming growth factor αが増殖因子として発現しており,この因子とEGFレセプタ-によるオ-トクリン増殖機構が重要な意義をもつことを明らかとした。このオ-トクリン機構の生物学的意義はヌ-ドマウスを用いたin vivoの系でも確認した。なお,これらの増殖因子,レセプタ-発現については,ノザンでロッティング,免疫組織化学染色,バインディングスタディなどで確認したが,現在,卵巣癌細胞が発現する増殖因子をウェスタンブロッティングでさらに分析をすすめつつある。 これらin vitro,in vivoでの基礎的検討をもとに,漿液性腺癌で粘液性癌より有意に高率でEGFレセプタ-,したがってTGFαーEGFレセプタ-オ-トクリン機構が発現していた事実を考えると,漿液性腺癌がよりアグレシブな増殖をするという臨床的事実に,このTGFαによる増殖機構が関与しているという可能性も考えられる。又,EGFレセプタ-を発現している卵巣癌に対しては,治療として,このオ-トクリン機構をブロックして,癌細胞の増殖を低下させるという方法も考えうる。
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