研究概要 |
(1)IVFーET:288名の不妊患者に355回のIVFーETを行った。結果は100名の患者が106回妊娠し,対移植周期の妊娠率は29.9%であった。過排卵は333回(93.8%)と大半がGnRHaーHMGーhCGで,その妊娠率は30.6%であった。採卵卵子数(6.9±3.8),受精卵数(5.6±3.4),正常胚数(2.6±2.0)はこれまでと変らなかった。移植時期別の妊娠率は,1日目(前核期)28.0%,2日目32.4%,3日目22.8%で大きな差はなかった。主要不妊原因別の妊娠率は,卵管性25.0%,子宮内膜症37.3%,卵管内精子輸送障害33.3%,原因不明25.8%でこれまでと同様の傾向を示した。年齢別の妊娠率は,20才台が42.1%ともっとも高く,以後は漸減し、40才以上では18.2%と低率であった。妊娠の予後は流産32.1%,子宮外妊娠6.6%,妊娠継続62.3%,多胎17.9%であった。対移植周期の分娩率(予想値)は18.6%で、これまでよりやや改善した。 (2)Micromanipulation:卵子内精子注入法について検討した。単なる精子注入では,84.3%(54/64)生存したが、受精率,分割率はそれぞれ,13.3%,1.9%ときわめて低かった。非受精卵の電顕による観察では,卵子内に完全に膨化した精子頭部が認められ,前核形成過程に問題のあることが示唆された。精子注入後の卵子をA23187,または電気パルスで活性化すると、前核形成率はそれぞれ,23.4%,36.4%に改善した。 (3)精子受精能力の分析:不妊患者3928例のZSPTの分析から,男性不妊の診断にZSPTがきわめて重要であることが再確認された。IVFとの関係では,ZSPT≦30%の場合は回収運動精子数や精子運動能にかかわらず,受精する確率はきわめて低かった。
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