研究概要 |
前年度の研究によりわれわれは炎症歯肉組織中には歯周病の病原因子の1つと目されるPorphyromonas gingivalisの線毛タンパクやLPSに対する特異抗体産生細胞の存在することをElispot法を用いて示した.同細胞数は歯周炎の病状の重症化に伴って顕著に増加することを明らかにした。これらの結果を基に,本年度の当初計画に従いいくつかの興味ある結果を得た。 1.抗線毛抗体産生細胞が分泌する免疫グロブリンクラスの分布はIgG>IgA>IgMであった.さらに,IgG及びIgA抗体のサブクラス別分布は,中等度の歯周炎ではIgG_1およびIgA_1特異抗体産生細胞数が最も多く,重症になるとIgG_1よりはむしろIgG_4やIgG_3産生細胞数が多数をしめるようになった。このさいIgA_2の増加が併せて観察された。 2.P.gingivalis LPSに対する抗体産生細胞数は線毛のそれに比較してはるかに少なかった。また大腸菌LPSやコレラトキシン,あるいはDNPーBSAに対する抗体産生細胞はほとんど検出されず,これまでの多くの研究の仮説にもかかわらず,ポリクロ-ナβ細胞活性化がin vivoではあまり生じていないことが示唆された。 3.遺伝的に異なる6種のマウスについて線毛抗原をアジュバントと共に経口免疫し,血清及び唾液中の免疫応答を調べた。その結果Hー2ハプロタイプがdのマウスは高応答性,kは中応答性,bは低応答性であることが示された。この事実はB10コンジェニックマウスを用いた実験でも証明された。これらの結果はP.gingivalis線毛に対するマウスの免疫応答性は,そのHー2ハプロタイプに拘束されていることが示唆された。
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