研究概要 |
リソソ-ム膜糖タンパク質である酸性フォスファタ-ゼが可溶性リソソ-ム加水分解酵素と異なり、Mー6ーPの受容体に依存しない異なった機構でリソソ-ムへ移行することを明らかにした。そこでリソソ-ム膜糖タンパク質が選別輸送されるためのsorting signalはタンパク質部分にあると考えて、本年度は、リソソ-ム膜に局在する、分子量85Kのシアロ糖タンパク質(LGP85)のcDNAのクロ-ニングを行った。 単離したLGP85のcDNAは2065個のヌクレオチドから成り、478個のアミノ酸(Mr54,090)をコ-ドする翻訳領域と11ケ所の糖鎖結合部位を有していた。N末端のアミノ酸シ-クエンスは読み始めのメチオニンのみを消失しているだけでシグナルシ-クエンスは切断されずに保持されていた。また、二ケ所に高い疎水性部位が観察され、N末端(アミノ酸残基4ー26)側とC末端(アミノ酸残基433ー458)に存在していた。二ケ所の膜アンカ-部位を有するリソソ-ム膜糖タンパク質についての報告は現在までなく、NおよびC末端側の膜アンカ-部分は何れも前述のリソソ-ム膜糖タンパク質のそれとの相同性は観察されなかった。LGP85は非常にユニ-クなリソソ-ム膜糖タンパク質である事が明らかになった。 リソソ-ムの形成には、エンドソ-ム、autophagic vacuole,およびゴルジ複合体に由来する輸送小胞が関与している。リソソ-ムが機能するためには、二次リソソ-ムと上記オルガネラとの融合が必須である。そこで、Ehrenreichらの方法でゴルジ-エンドソ-ム画分を調整し、精製エンドソ-ム間の融合を検討した。精製エンドソ-ム間の融合に要求されるファクタ-と粗エンドソ-ム間の融合に必要とされるファクタ-の相違は観察されなかった。しかし、オ-トリソソ-ムと精製エンドソ-ムとの融合に於いては、ATP存在下と非存在下での融合率はほぼ同じであった事はエンドソ-ム間の融合条件とは著しく異なっていた。
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