研究概要 |
鳥取県下で発見された自家和合性を示すニホンナシ‘おさ二十世紀'を用い,自家和合性と黒斑病抵抗性を合せもつ新品種の育成と,ニホンナシに共通的に認められる自家不和合性を究明することを目的として,本研究を行った。平成2年度における成果の概要は次のとおりである。 1.‘おさ二十世紀'の自殖および交雑第一代について,平成元年度に引続き自家和合性と黒斑病抵抗性の調査を行った。自家和合性で黒斑病抵抗性を示した系統について,さらに果実の品質を調査し,新品種としての可能性のある有望系統を20系統選抜した。 2.‘おさ二十世紀'の自家和合性をS遺伝子の突然変異の面から調査した。自家和合性を示す‘おさ二十世紀'とその自殖第一代,‘おさ二十世紀'ב幸水',自家不和合性を示す‘おさ二十世紀'ב豊水'のF_1,‘おさ二十世紀'ב新水'のF_1のそれぞれの花柱のタンパク質を比較すると,‘おさ二十世紀'ב幸水'(和合性)と‘おさ二十世紀'ב豊水'(不和合)の両系統でS_2遺伝子のタンパク質が欠落していることが認められた。したがって‘おさ二十世紀'の自家和合性は,S_4遺伝子が突然変異をおこしたことに基くと考えられた。 3.自家和合性と花柱内のRNase活性との関係をみるため,自家和合性を示す‘おさ二十世紀'交雑F_1と,自家不和合性を示す同品種の交雑F_1について,花柱内のRNase活性を測定した。しかし両者には差異は認められず,ナシにおける自家不和合性は,タバコ属における自家不和合性とは発現の機構を異にするとみなされた。
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