研究概要 |
現代のスペインの演劇作品を30選び,これをコンピュ-タに入力することによって総語数50万のデ-タベ-スができあがった。 本年度はこれを機械処理し,より精度の高い言語学的分析が可能となるよう文脈付索引を完成させた。デ-タの量が膨大であるため,今回はその十二分の一の量を少数の部数に限って印刷することにした(『スペイン演劇作品の言語学的分析-(V- 1)コンコ-ダンス:ANAZULES』) この資料をもとにして,記述言語学の立場から,付の3つのテ-マについて研究を行なった。 (1)不定冠詞の機能 (2)前置詞句 (3)前置詞と関係代名詞との結びつき (1)では,不定冠詞の複数形としてunosの形式を認めず,単数形のun,unaに対応する複数形はゼロ冠詞であることをデ-タを基に提案した(これを『スペイン語学研究』vol.4に発表した)。 (2)前置詞+名詞+前置詞という連続が,単なる偶然的なものと,熟語化して1つの前置詞のような機能を持つものがある。両者の違いを意味と統語の面から調べた(これを第9回関西スペイン語学セミナ-で口頭発表した)。 (3)スペイン語の関係代名詞は,その前に前置詞がつく場合とつかない場合とでは用法に大きな違いが生じる。これをデ-タによって確かめ,その原因を,3種に分類される構造の違いに求めた。また,用法については,従来の限定用法と説明用法のほかに,「同格用法」を認めることが妥当であることを示した(これを,1989年,1990年の東京スペイン語研究会の例会で発表した)。
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