わが国の近現代史研究において欠落している領域の一つが「小日本主義」研究である。その意味で本研究は石橋湛山の外交思想に限定しながらも、この分野の先駆的位置を占めるものである。 本年度は、二年的の平成2年度から開始した石橋湛山の戦後期における政治研究を継続して行った。すなわち、公職追放解除後の1950年代における石橋湛山の脱冷戦に関する外交思想研究を多角的に実施した。とりわけ1990年9月に石橋家より寄託された未公開の石橋湛山文書など100点余をワ-プロ化する作業を進める一方、すでに収集した国会図書館での石橋湛山関係資料の300点余を調査、整理した。加えて、当時湛山の政治秘書を努めていた人物や地元静岡選挙区の支援者、その他の湛山関係者へのインタビュ-を行い、研究上の空白を補うことに努めた。これら研究の成果については、1991年5月、日本大学で開催された日本国際政治学会において報告(論題は「石橋湛山の日中米ソ平和同盟構想」)した。その後この報告を基に論文の執筆を開始し、脱稿後、同論文は慶応義塾大学法学部の紀要『法学研究』に本年中に掲載される予定である。また目下準備を進めつつある近代および現代日中関係史における石橋湛山の歴史的位置付けの研究は、本年秋には著書『石橋湛山と日中関係』として草思社より出版する予定である。
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