わが国の近現代史研究において欠落している領域の一つが「小日本主義」研究である。その意味で本研究は石橋湛山の外交思想に限定しながらも、この分野の先駆的位置を占めるものである。 初年度の平成1年度では、石橋湛山の戦前期言論人時代の研究成果を博士論文「石橋湛山研究 小日本主義者の国際認識」としてまとめ、1990年3月に慶応義塾大学より法学博士号を授与された。また同年6月にはこの博士論文が東洋経済新報社より単行本として出版されるに至った。なお同著作は、同年12月、石橋湛山賞を受賞する栄誉を賜った。 そこで二年目の平成2年度より、研究対象を戦後期の政治家時代へと移し、公職追放解除後の1950年代における石橋湛山の外交思想に関する研究を開始した。とりわけ石橋家より未公開の石橋湛山文書など100点余を寄託され、検索できたことは研究上きわめて大きな成果となった。またすでに国会図書館に寄託した石橋湛山関係資料を調査、整理できたことも有意義であった。加えて、当時の湛山関係者へのインタビュ-を行い、研究の空白を補った。反面、この間に新設大学に転任したため、研究施設上の不便さが影響し、研究面でマイナスに作用したことは否めない。とはいえ、これらの研究の成果は三年目の1991年5月、日本国際政治学会にて報告(輪題は「石橋湛山の日中米ソ平和同盟構想」)した。その後この報告を基に論文を執筆し、それは慶応義塾大学法学部の紀要『法学研究』に本年中に掲載される予定である。また本年秋には単行本として『石橋湛山と日中関係』を草思社より出版する予定である。
|