研究概要 |
同時連立方程式体系における様々な推定方法を比較検討した。特に全体系法(あるいは全システム法)と呼ばれる完全情報最尤推定量(FIML)と3段階最小2乗推定量(3SLS)の性質を中心に分析した。森棟が最近提案した修正3SLS推定量(M3SLS)をも含めて、次の分析を行なった。 1.推定量の分布の漸近展開を導出する。 2.推定量の分布を大型計算機を使ってモンテカルロ・シィミュレ-ション実験によって求める。 森棟はいわゆる単一方程式推定法について1と2の分析を過去の10年間行ったが、全システム法に関して1と2の分析は従来誰も行っていない。分析の手続きはかなり複雑でもある。しかし二年間の研究の結果、1については導出で完了した。2についてもかなりの実験を行ない、一応の結果をまとめることができた。研究の重要な目的の一つは,FIMLはアルゴリズム的に複雑であるので、FIMLに近い推定量を作り出すことであったが、これは先に述べたM3SLS法で成功した。この推定量はFIMLと同じ分布の漸近展開を(1/T)の項までもち、計算法としても容易である。このM3SLS法に関してもモンテカルロ実験をさまざま行ない、その性質を分析した。結論としては 1.分析の形状を考慮するとM3SLSは3SLSより歪みのないよい推定量である。 2.しかし推定量のモ-メントを求めると、異常に大きい値が示されることがあり、モ-メントの不存在が暗示されている。 という事が分かった。この推定量については一層の研究が必要である。
|