研究概要 |
数学は今世紀の後半に入って急速な発展をしつつあるが、この10数年の間の発展は目醒ましいものがあり,特に,情報科学関連領域への数学の応用は著しい.この領域は従来の数学概念を越え,数理科学或いは情報数理科学と呼称する分野である.本研究では,この分野を函数解析的方法を駆使して,更に新たな領域に発展さすきっかけを作ることを目指した.これ等を順に概説する.(1)Fourier解析の函数解析的展開.これはHilbert空間上の作用素代数の基本理論を用いて,Gelfand表現し,それをFourier変換論に適用する.これにより調和解析の総べての基本定理を明らかにした.(2)この結果をRadon変換に適用し,それを用いて現代医療工学に於ける最新の成果「CTースキャナ-」の数理解析を展開した.我々の函数解析学は数学分野の研究者が全く考えも及ばない「CT」の数理の究明に関与し得ることを明らかにしたことになる.このことは我々が展開した数理科学に於ける先駆的研究成果である.(3)信号解析に於ける基本的手法は標本展開定理である.そこにおける主役は標本函数であり,その数学的取扱いを巡って函数解析を展開した. Formulationはvon Neumann代数と同スペクトル理論である. この研究によって信号の数理が明確に解析できる. 一方,Shannonによって発展させられたエントロピ-理論に光通信理論,遺伝子の解析,量子フラクタルの理論等に適用し,エントロピ-概念の有用性を論じた.それを次に概略する.(4)光通信理論の研究では,相互エントロピ-と量子チャンネルの構成法を基に,各種変調方式の伝送効率及び誤り確率等を函数解析的手法を用いて調べた.(5)遺伝子の情報論的解析に関しては,2種の生物のアミノ酸をコンピュ-タを用いて整列化して複合事象系を設定し,対称エントロピ-比によって生物の類縁度を測り系統樹を作成し,これを既存の系統樹と比較考察した.
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