研究概要 |
C^*代数上の非有界微分論とその量子力学,量子統計力学,微分多様体への応用に関する研究を推進し,かなりの成功をおさめた。とくに量子格子系に関する理論はUHF代数上の正規微分の研究という一般化された形の中で平衡状態,相転移,Bounded Perturbation等の概念を定義し有効な理論を展開することができた。また,連続量子系についても,C^*代数上の非有界微分の枠組の中で公理的に取り扱ひ,time evolution,平衡状態等の概念を導入し,少くとも,かなり多くの連続量子系モデルについて非有界微分を定義することに成功した。 これらの結果はCambridge University Pressから平成3年5月出版予定である。また,C^*代数の一般論の中での最重要未解決問題であるStoneーWeierstrass問題についての研究も推進した。この問題については20年程前に研究代表者による問題の部分解決がなされ,その方法に従って,世界各国の研究者達による種々の部分解決が発表されたが,完全解決には到って居ない。 本年度の研究で,若干の進歩が得られた。得られた結果については更に研究を進め論文として発表する予定である。 連続量子系に於けるtime evolusion,平衡状態等の理論を展開するためには,非有界作用素のつくる作用素代数を使用する必要があるようにも思われるので,非有界作用素代数の研究も行った。結果は十分とはいえないもので,今後更に研究を押し進めるつもりである。
|