プラセオジウム、ネオジウムおよびガドリニウムの六ホウ化物の薄膜試料(800/1500〓)を真空蒸着法で作製し、その希土類N_<4.5>放射スペクトルをいくつかの励起電圧で測定した。その結果、1.5kV以下の励起電圧で測定した放射スペクトルは自己吸収の影響が少なく、いずれの物質でも希土類N_<4.5>吸収領域と同じエネルギ-領域に、幅が広く強い放射構造が観測され、その低エネルギ-側に、いくつかの微細構造が認められた。これらの放射構造の内、いくつかのピ-クのエネルギ-位置は吸収スペクトルのピ-ク位置にほぼ一致し、放射スペクトルの全体的な形状も吸収スペクトルのそれと良く似ている。これらのことから、吸収領域に見られる放射構造は4d^94f^<n+1>励起状態(ここでnは基底状態の4f電子数)から基底状態に遷移する際に軟X線を放射したために生じたと考えられる。しかし、プラセオジウムとネオジウム六ホウ化物の場合、放射スペクトルと吸収スペクトル(光電収量スペクトル)や共鳴光電子分光法によって測定されたこれらの物質の希土類の4f準位や5p準位を始状態とする定始状態(CIS)スペクトルと比較すると、お互いのピ-ク位置は、必ずしも一致しないことがわかった。このことは、4d^94f^<n+1>励起状態が崩壊する際の緩和過程が、輻射崩壊と無輻射崩壊過程では異なることを意味すると考えられる。 カドリニウム六ホウ化物や次年度測定する予定の物質のCISスペクトルは測定されていないので、4d^94f^<n+1>励起状態の輻射崩壊と無輻射崩壊過程をより良く理解するために、次年度以降測定する予定である。
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