人家の中に住みつけるようになったクモとして良く目につくのはイエユウレイグモであるが、このクモが人家の中に住みつけるようになった主要な原因は、温度さえ高ければ彼らの発育や産卵が光周期によって影響されないことである。(この結果は昨年度米国クモ学会誌に発表ずみ)しかし、これを明確に証明するためには、これに良く似たものでしかも人家には決して住みつかないものの光周反応を調べ、両者を対比してみる必要がある。 本年は、この目的のため人家に住みつかないユウレイグモについて、発育に及ぼす光周期の影響を調査した。その結果は明らかで、このクモは25℃-長日條件下の飼育では、約2ヶ月で成体となるのに対し、25℃-短日條件下での飼育では、令期間が著しく延長するため5〜6ヶ月以上経過しないと成体とならない。つまり、人家に住みつけないクモの生活史は自然の光周期によって強く規制されているため、彼らが人家の中に住みつくと生活史が狂ってしまい、生残れないのである。同様な事実をやはり人家の中には決して入って来ないヤミイロカニグモについても調べてみたが、このクモの発育もやはり短日條件下では著しく遅延した。(この結果は、本年度英国クモ学会誌に発表)なお、この他2〜3種の人家の中に住みつくものと、そうでないものとについて、彼らの産卵が温度と光周期によってどのように影響されるかを調査中であるが、越冬成体で調査を開始した短日條件下での産卵が著しく遅延するものが生じているため、飼育実験が現在(3月中旬)でもまだ継続中である。
|