鉄筋を緊張することにより、鉄筋コンクリ-ト部材にプレストレスを導入しておけば、将来、コンクリ-トが乾燥収縮しても、鉄筋が同時に変形するため、極めてひびわれの生じ難い部材を得ることができる。 本年度は先ず実際に製品として用いられているプレキャスト3面水路蓋に例をとり、鉄筋緊張の効果を確かめてみた。その結果、鉄筋の降状点の50%程度で緊張しても、ひびわれ性状は著しく改善され、工場製作および運搬等の作業が、従来に比べて容易に行えることが明らかとなった。また、3ヶ月以上経てもコンクリ-ト下緑には10kgf/cm^2程度のプレストレスが依然として残存しており、従来多かったひびわれによるクレ-ムもほとんど無くなるものと考えられる。 次に、コンクリ-ト標準示方書では、プレストレス導入時のコンクリ-ト強度を300kgf/cm^2以上としているが、鉄筋緊張の場合でもその必要があるか否かについて検討した。 部材端では鉄筋の張力が、フシの抵抗力と鉄筋のポアソン効果に起因する摩擦抵抗力とで分担されるものとする定着機構モデルを考案し、理論計算結果と実験値を比較したところ、両者は極めて良く合致した。計算結果では、プレストレス導入時のコンクリ-ト強度が150〜200kgf/cm^2程度であっても、フシに働くせん断応力は、コンクリ-トのせん断強度の1/3程度であった。このことから、鉄筋緊張によりプレストレスを導入する場合、コンクリ-ト強度が150〜200kgf/cm^2程度でも、鉄筋定着性能は十分であることが明らかとなった。
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