本年度は、主として以下の2点について研究を続行し、それぞれ新しい知見を得ることができた。なお、一部長期試験が必要となり、平成3年度4月上旬まで実験がずれ込むものが生じた。 鉄筋に導入できる緊張力はPC鋼材の場合の約1/3〜1/2であるから、クリ-プ・乾燥収縮等によって消滅してしまう場合も考えられる。そこで、実際の二次製品について、種々の条件下での有効プレストレス力の計算を行い、それによるひびわれ抑制効果を調べてみた。その結果、鉄筋の緊張力を増加させることにより、曲げモ-メントによる増加応力Δσ。は著しく減少すること、導入引張応力が2500kg/cm^2(SD30の降伏点の83%、SD50の降伏点の50%)以下であれば、全鉄筋応力σ。(デコンプレッション時の応力σ。。+増加応力Δσ。)はRCの場合より1割程度しか増えないこと、また、ひびわれ幅は鉄筋増加応力Δσ。の関数であるから、ほとんどの二次製品では、1500kg/cm^2で緊張すれば、特に厳しい環境条件下でも、十分にひびわれ限界状態を満足することが明きらかとなった。これについては、確認のための長期試験を実施している。 次に、JIS Z2276に準じて、常温および高温時での鉄筋のリラクセ-ション試験を実施した。常温時の試験結果から、1000時間後のリラクセ-ション率を推定すると、SD35、SD50について、それぞれγ。=1.3%、3.6%となり、高温時については、温度変化によって複雑な性状を示すが、1000時間後のリラクセ-ション率はSD35、SD50ともγ=4.5%以下に落ち着くものと考えられる。何れにせよ、鉄筋のリラクセ-ション率は通常のPC鋼材のそれより小さくなるものと予測される。
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