本研究は、平成元年3月から試験湛水が開始された定山渓ダム貯水池(さっぽろ湖)を研究対象として次の二点について研究することを目的としている。第一点としては、ダム貯水池の湛水開始直後の水質変化を明らかにし、その間に生ずる過渡現象(特に富栄養化)について把握する。第二点は湛水以前に行われた流入河川等の調査結果に基づきダム湖の水質予測を行い、その結果を実測値により検証し、精度の高い予測方法を確立することである。今年度は、ほぼ当初の計画通り研究を実施することができた。下記に結果を記す。 1.湛水直後の水質変化に関する調査・解析 湛水直後の水質変化の解析を主目的として、5月、8月、10月の三回調査を実施した。その結果、湛水直後に固有な現象も観測されたが、概ね良好な水質が保たれ、顕著な水質悪化は認められなかった。 2.ダム湖の水質予測モデルの作成 水温・濁度の鉛直一次元モデルにより、豊平峡ダムについて計算を行い、過去の実測値と比較したところ、ほぼ満足すべき結果が得られた。引き続き定山渓ダムに関する計算を行っている。今後モデルを改良し、貯水池内の水流動について解析を行うとともに、選択取水の有効利用法についても検討する予定である。 3.流入河川の汚濁負荷量の把握と流出モデルの検討 夏期〜秋期洪水時の調査を8月に2回実施し、中程度の洪水時のデ-タを収集することが出来た。この結果を加えて定山渓ダム流入負荷量を計算した。また、タンクモデルによる流量シミュレ-ションを行ったが、夏季〜秋季の精度が悪く、パラメ-タ、入力気象デ-タ等についてさらに検討を続ける予定である。
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