前年度の研究において、ビベンゾエイトをメソゲンとし種々の屈曲鎖を有する一連のポリエステル(BBーn)を合成し、それらが示すスメクチック液晶の構造同定を行なってきた。本年度は、これら液晶の構造と物性の詳細な評価を行ない、高分子スメクチック層構造の特性を以下に示すように明らかにすることができた。また、液晶配向場における高分子鎖状形態とスメクチック層構造特性との相関についても調べ、液晶構造に及ぼす高分子効果もあわせて明らかにした。 その主要な結果は以下のとうりである。 (1)屈曲鎖炭素数nが偶数であるBBーnは、メソゲン軸、分子軸ともに層に垂直配向したS_A相を示す。一方屈曲鎖炭素数nが奇数のBBーnにおいては、その分子軸は層に垂直配向しているが、メソゲン軸は隣接層間で交互に逆方向にチルトしたSc_2相が形成されることを明らかにした。 (2)以上の結果は、液晶配向場において高分子のとりうる鎖状形態が偶奇両系で異なっていることを示すものであり、このことを回転異性状態近似による計算機シュミレ-ションにより明らかにすることができた。また、ここで抽出された鎖状形態を考慮し、相転移エントロピ-や、層の厚さに見られる偶奇振動を定量的に評価することができた。 (3)S_A相とSc_2相の配向秩序、層構造秩序を求め、配向秩序に関しては前者が高く、層構造秩序に関しては後者が高いことを明らかにした。
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