研究課題/領域番号 |
01560164
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
二井 一禎 京都大学, 農学部, 助手 (50165445)
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研究分担者 |
古野 東洲 京都大学, 農学部, 助教授 (00026626)
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キーワード | マツノザイセンチュウ / 植物カルス / ポリフェノ-ル類 / 縮合型タンニン / 電解質漏出 / ス-パ-オキサイド / クロマツ / アカマツ |
研究概要 |
昨年度までの実験によりマツノザイセンチュウ(材線虫)が供試した数種類の植物カルス上でよく増殖することが明らかになったので、これ細胞レベルまで下げて寄主反応観察の手段にするべく多くの試行錯誤を繰り返したが、幾つかの難点があり、現在この実験は一時中断中である。一方、クロマツ、アカマツの苗木を用いる事により、材線虫感染部位に集積する物質の同定を試み、その役割の解明を目指した。その結果、材線虫感染部位にポリフェノ-ル系の物質が集積すること、中でも縮合型タンニンの蓄積が顕著であることが明らかになった。in vitroの実験系から、このタンニンが材線虫の増殖を抑制すること、またその行動に対して忌避的であることが判明し、マツ類生体内でも本来、侵入者に対して、抵抗性因子として機能することが伺われた。次に鉢植苗木に対して2段階の灌水条件を設定し、これらに材線虫を接種した後に生起する寄生反応を樹皮部と木部別に、接種点からの距離別に、各部位のタンニン量、含水率を指標として経時観察した。測定結果を各部位の線虫数との間で重回帰分析したところ各部位の線虫数と木部含水率の間に負の相関が見られ、線虫の活動と水分通導阻害の間に一定の因果関係が存在する事が示唆された。続いて材線虫を接種した苗木において、接種点からの距離別に、主軸各部における過酸化脂質量、ス-パ-オキサイド発生量、電解質漏出量を経時測定したところ、線虫接種後一定の期間を置いて、線虫数と相関を示すようになった。これらの実験結果は線虫感染後に防御反応として様々な生理的変化が生起し、最終的にはその反応が過剰であるために、細胞内容物の漏出をもたらし、仮導管狭窄部の閉塞に至る、病徴の進展経過を強く示唆するものとなった。
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