網位置の制御特性の勝れた中層トロ-ルシステムの開発を目的として東京水産大学研究練習船神鷹丸において、日本海の若狭湾で中層トロ-ル網の実験を実施し、種々の曳網条件下における網の張力、網成り、網水深等を水中張力水深計及びスキャマ-により計測した。理論的に推定した網抵抗を初期条件として、中層トロ-ルシステムの理論解析をコンピュ-タにより実行した。また、網位置の自動制御を開発する基礎資料を得ることを目的として、神鷹丸において網位置の制御実験を実施し、曳網速度とワ-プ長を変えることによる張力の変化及び綱高さ、綱幅を連続的に計測した。その結果、海上で得られた実測値から求められた抵抗式による推定値の平均誤差は11%以内、また理論解析による網及びオッタ-の水深は、実測値に対する相対誤差がいずれも8%以内に収まるなど、理論と実験とは良い一致を示した。 新しいトロ-ルシステムとして、オッタ-ボ-ドの代りにキャンバス製拡網板を用いた中層トロ-ル網を設計したが、このキャンバス式と従来よりのオッタ-式との運動特性を模型実験により比較した。漁具抵抗に対する相対網口面積は高速てはオッタ-式が、低速ではキャンバス式が高い値を示したことから、キャンバス式が特に低速曳網法に適していることが示唆された。一方、網深さを同じ鉛直距離だけ制御するに要する時間は、オッタ-式よりキャンバス式の方が短く、キャンバス式の網深さの制御特性の勝れていることが示された。 キャンバス式の中層トロ-ルシステムに用いる拡網装置として新たに反りのある畝付きのウイングパラカイトを設計し、模型により流体特性を調べた。この中で勝れた特性を示したのは反り比17%畝10個のもので、常用迎角における揚力係数は1.14、揚抗比3.35となり、現在の縦型湾曲オッタ-に匹敵する性能であることが分った。
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