研究概要 |
制御特性の優れた中層トロ-ルシステムの開発を目的として、昨年に引続き、東京水産大学研究練習船神鷹丸において、日本海若狭湾で中層トロ-ル網の実験を実施し、曳網速度及びワ-プ長さを変化させて網抵抗、網高さ、袖網間隔、網深さ、オッタ-深さ等の時間的変化を計測した。中層トロ-ルシステムの静的特性を理論解析したところ、網及びオッタ-の水深は実測値とよい一致を示した。シミュレ-ションの結果より、ワ-プ長及び曳網速度が網水深に大きく影響し、オッタ-の揚力及びワ-プ長が袖網間隔に大きく影響することがわかった。動的実験において、設定速度3〜3.5ktにおいて、ワ-プ長を100mずつ変化させたとき、網水深及びオッタ-ボ-ドは8〜12分で安定し、ワ-プの巻き上げ時は、繰出し時より2〜3分早いことが認められた。曳網速度で制御する場合は、ワ-プの長さによらず、加速時よりも減速時の方が網水深,オッタ-水深及び網幅ともに、より安定性がよいことが分かった。船速の変動による中層トロ-ルの動的挙動を推定するために、数学モデルを構築し、システム工学の手法により解析を行った。モデルは、船速の変動によるハンドロ-プ張力の動的挙動を推定するための自己回帰平均移動モデルを考えた。海上実験で計測した船速及びハンドロ-プ張力から、モデルに含まれる未知パラメ-タを推定した。得られたモデルの妥当性について、残差の白色検定を行った結果、有意水準10%でモデルは妥当であることが確かめられた。最後に、得られた自己回帰モデルを用いてモンテカルロシミュレ-ションを実施し、その結果を海上実験より得られた実測値と比較したところ、両者はよく類似していることが認められた。
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