網位置や網口広さの制御特性の優れた中層トロ-ルシステムの開発を目的として、水槽実験海上実験及び理論の三つの方向から研究を進めた。まず、中層トロ-ルシステムの制御特性の基礎的知見を得るために、模型網を用いて回流水槽において水槽実験を行った。新しいトロ-ルシステムとして、オッタ-ボ-ドの代わりにキャンバス製拡網板(ウイングパラカイト)を用いた中層トロ-ル網を設計したが、このキャンバス式と、従来よりのオッタ-式との運動特性を模型実験により比較した。キャンバス式はオッタ-式に比ベて網深さの制御特性に優れ、特に低速曳網法に適している。制御特性に影響する主な要素は、ハンドロ-プの長さで、これが短いほど網位置の制御特性が優れていることを明らかにした。次に海上実験は、平成元年と2年の秋の2回にわたって、東京水産大学研究練習船神鷹丸で、日本海の若狭湾沖合で行った。実験には網深さ、網高さ及び袖網間隔の計測にノルウェ-製のスカマ-システムを、またハンドロ-プ張力及び水深の計測に国産の水中張力・深度計を用い、ワ-プ張力、船速等は、船に装備の最新の装置を活用し、10〜20秒毎の時系列デ-タを得た。神鷹丸の中層トロ-ルシステムの静的及び動的理論解析を行うため、中層トロ-ル網の抵抗式を導出するとともに、12分の1の模型オッタ-ボ-ドにより、ボ-ドの流体特性を明らかにした。これらの結果を用いて、中層トロ-ルシステムの理論的解析を行った結果、理論による網及びオッタ-の水深は、実測値に対する相対誤差が8%以内に納まり、理論と実験とがよい一致を示した。最後に、船速の変動による中層トロ-ルの動的挙動を推定する自己回帰モデルを構築した。実測値から未知パラメ-タを推定し、モデルの妥当性を検定した結果、有意水準10%でモデルは妥当と認められた。さらに、シミュレ-ションの結果、両者の変動はよく類似していることが確められた。
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