本年度当初の実施計画は、ウニ未受精より分離した小胞体を主として含む膜小胞を用い、下記の2点を明らかにする亊であった。 1.膜小胞へのATPによるCa^<2+>の取り込みとIP_3による膜小胞からのCa^<2+>遊離の定量的研究。 2.膜小胞に存在するイオンチャネルの検索。 計画1に関してはほぼ初期の目的を達した。膜小胞へのCa^<2+>の取り込み速度及び最終取り込み量は膜小胞懸濁液の蛋白濃度によるが2mg/mlの場合1mMATP添加後約5分間でCa^<2+>濃度PCa5.8から7.3に達する。この最終値はウニ未精卵細胞内Ca^<2+>濃度として報告されている値に近い。一変Ca^<2+>遊離は、0.6μMIP_3添加後約10秒でpCa6.9に達する。その値は受精時の卵内Ca^<2+>の一過性の増大のピ-ク値を説明しうる。IP_3濃度とCa^<2+>遊離量の関係はIP_33μMで遊離量はほゞ飽和する。飽和量の1/2量の遊離は74nMIP_3で起る。又IP_3によりCa^<2+>遊離には脱感作現象が観察され、回復には長時間を要し、90分後でも70%程度しか回復しない。 計画さに関しては、膜小胞を脂質平面膜と触合させ単一イオンチャネル電流を測定する方法を用いた。その結果K^+、Cl^ー及びCa^<2+>チャネル各々数種類が存在する事を確認した。最も高頻度に観察されたのは約30pSのコンダクタンスを持つK^+チャネルである。しかしながら現在までの所IP_3により開確率が上ったりコクダクタンスが増大するCa^<2+>チャネルは発現されていない。これは膜小胞に存在するこの様なチャネルの数濃度が低く観察出来なかった可能性がある。そこで現在IP_3レセプタ-チャネルを可溶化・精製し再講成する実験を行っている。
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