研究概要 |
1.慢性骨髄性白血病を含む約30例の白血病症例につき,その末梢血細胞あるいは骨髄細胞の培養を試みた結果,真性多血症由来の未熟な骨髄系細胞株を樹立した。しかし,巨核球系マ-カ-としてはTP82抗体のみで陽性となり,血小板産生像も認められなかった。2.Tー33株細胞の分化誘導をILー6添加でおこなった結果,ILー6(10〜50ng/ml)は細胞膜表面の血小板糖蛋白(GP IIb IIIa)の発現が誘導された。このILー6添加後継時的に4日目まで採取したTー33細胞のcーyesチロシンキナ-ゼ活性は減少することなく,4日目まで明瞭に増加を示し,TPA分化誘導の場合とは明らかに異なる興味ある結果を得た。この両者の分化誘導物質の作用機序の差を解明することは巨核球分化の機序に関する手がかりになるかもしれない。 なお,新しく樹立した血小板増多を伴う悪性中皮腫由来の細胞株の培養上清中にILー3,ILー6を検出したが,巨核球系前駆細胞(CFUーMeg)アッセイ法による検索結果では,この上清添加による骨髄細胞の巨核球系コロニ-形成の有意な増加および血小板放出は認められなかった。3.Tー33の分化誘導におけるcーyes癌遺伝子蛋白のチロシンキナ-ゼ活性の検討を免疫沈降法でさらに続けた。Tー33はTPA処理後3時間から40時間にかけて,つねにTPK活性の低下を認めた。K562も同様に16時間から40時間にかけて低下した。反対に,単球系細胞のU937株はTPA処理後6時間から48時間にかけてTPK活性は増加した。HLー60は3時間から12時間においては低下の傾向を示し,36時間において増加した。ILー6処理後のTー33は40時間において増加した。一方,cーsrcのTPKに関しては,Tー33,K562,HLー60株は24時間から48時間にかけて増加した。
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