研究課題/領域番号 |
01570221
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
田邊 將信 慶應義塾大学, 医学部寄生虫学教室, 専任講師 (80051928)
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研究分担者 |
金子 信明 慶應義塾大学, 医学部寄生虫学教室, 助手 (50177523)
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キーワード | マンソン住血吸虫 / 肝細胞ミトコンドリア / 呼吸能 / 虫卵性肉芽腫 / 電子伝達系 / NADH脱水素酵素 |
研究概要 |
マンソン住血吸虫(Sm)感染時におけるマウス肝細胞のミトコンドリア(Mt)機能を解析し、以下の成績を得た。Smに感染したICR及びC3Hマウスの肝細胞Mtは共に非感染マウスのそれと比較し、その呼吸調節能(RCI)が有意に低下し、また、感染の進行とともにRCI値の低下及びP/O比の著しい低下を示した。しかし、分光学的に測定したチトクロ-ム含量には差は見いだされなかった。以上の変化はMt呼吸のアンカツプリングを示していると考えられたが、このことは感染マウスの肝細胞中にMg依存性のATPase活性が組織化学的に検出されたことからも示唆された。さらに、感染マウスの肝細胞Mt内グルタミン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、NADH脱水素酵素、チトクロ-ム酸化酵素等の活性も有意に低下していることが見いだされた。一方、この様な感染マウスの肝細胞Mtの機能低下に対応し、超微形態学的にもMtの変化が観察された。他方、この様な肝細胞Mt変化の病原機構を解析するために、成虫及び虫卵性肉芽腫粗抽出液あるいは成虫培養上清液の正常マウス肝Mtへの投与効果を検討したが、現在までのところ、虫卵性肉芽腫抽出液投与マウスにおいてのみ、上記肝細胞Mtの呼吸能あるいは各種酵素活性変化が観察された。このことは、マンソン住血吸虫感染マウスで観察される肝実質細胞のMt変化に、虫卵性肉芽腫中に含まれる因子が関与している可能性を示しているものと考えられた。 以上の成績から、実験的Sm症において、肝細胞Mtの機能低下が存在すること、さらには、その発生機構の一部に虫卵性肉芽腫が関連している可能性が示唆されたものと考えられた。
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