研究概要 |
1)胸腺移植実験自己免疫疾患を発症しないBWF1ヌ-ドマウス(Hー2^<d/z>)にNZB(Hー2^d)、NZW(Hー2^d)或いはBWF1(nu/+)マウス(Hー2^<d/z>)からの胸腺を移植した。NZB胸腺移植群に於いてはNZWやBWF1胸腺移植群と比べて、血中抗ーssDNA IgG抗体価、尿中蛋白及び血中尿素窒素量の上昇、生存率の低下に特徴づけられる自己免疫疾患の発症が明かに遅延かつ軽減された。即ち、胸腺のHー2遺伝子型が自己免疫疾患の発症に重要な役割を果たしている事が示された。各胸腺移植群の末梢Tリンパ球はBWF1ヌ-ドマウスの骨髄細胞由来であるが、NZBの胸腺(Hー2^d)の環境下で成熟したTリンパ球は低い自己抗体産生誘導活性(ヘルパ-活性)しか示さない為に、自己免疫疾患の発症が遅延かつ軽減された可能性が考えられる。 2)骨髄移入実験これ迄のX線照射骨髄キメラマウスを用いた実験から、移入した骨髄細胞から生成するTリンパ球のレパ-トリ-は、骨髄細胞のHー2遺伝子型ではなく主として宿主の胸腺のHー2遺伝子型により後天的に形成される事が知られている。そこでBWF1マウスの骨髄細胞を、致死量のX線照射を行ったNZW,NZB,或いはBWF1マウスに移入する事によりBWF1→NZW,BWF1→NZB,及びBWF1→BWF1骨髄キメラマウスを作製し、各キメラマウスのTリンパ球のin vitroでの抗ーssDNA抗体産生に於けるヘルパ-活性を測定した。BWF1→NZW或いはBWF1→BWF1キメラマウスのTリンパ球には著明な抗ーssDNA IgG抗体産生誘導活性が検出された。しかし、この様なヘルパ-活性は、BWF1→NZBキメラマウスのTリンパ球には全く検出されなかった。 以上の結果から、BWF1マウスでのHー2遺伝子に連鎖した自己免疫疾患の発症は、胸腺のHー2遺伝子型がIgGクラスの自己抗体産生誘導活性を有するヘルパ-Tリンパ球亜集団の生成に影響を与えることに起因する事が示唆された。
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