研究概要 |
最近、リンパ球の活性化、増殖、分化における細胞の生化学的現象について、他の真核細胞の場合と同様な反応系の存在することが明らかにされてきている。そこで、全身性エリテマト-デス(SLE)の免疫異常を細胞内情報伝達系から明らかにするため、SLE患者末梢血リンパ球のCa結合蛋白であるCalmodulin(CaM)反応機構について検討を行った。 疾患活動性を異にするSLE患者末梢血リンパ球の各種mitogen反応、およびT,B細胞のcocultureによる免疫グロブリンIgM産生反応に対するCaM阻害剤であるN-(6-aminohexyl)-5-chloro-1-naphthalensulfonamide hydrochloride(W-7)の影響について、W-7と構造的に類似し、CaM阻害作用のないW-5を対照薬剤として、免疫薬理学的に検討を行った。 活動期SLE患者末梢血リンパ球のmitogen刺激に対する増殖反応に、W-7は非活動期SLE、あるいは健康人にみられたような抑制効果は示さなかった。とくに、Con A誘導抑制T細胞に対するW-7の影響が著明であった。また、活動期SLE患者の末梢リンパ球のIgM産生反応の検討では、W-7は無刺激下のB細胞のIgM産生の亢進を抑制、PWM刺激によるIgM産生の低反応を回復させた。 以上のことはSLE患者の末梢リンパ球レベルにおいてCaM反応系に異常の存在することが示唆される結果である。今後の研究予定はSLEリンパ球においてinterleukin 2(IL-2)産生、反応、IL-2リセプタ-発現能に異常のあることが知られているが、IL-2反応系の異常について細胞内情報伝達系から検討を行うべく、準備中である。
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