研究概要 |
最近のリンパ球活性化、増殖、分化の生化学的研究の結果、リンパ球の細胞内情報伝達系について明らかにされてきている。全身性エリテマト-デス(SLE)の免疫異常の発現にリンパ球の細胞内情報伝達系が関わっていることを前年度の研究で明らかにしてきた。この研究をさらに発展するために細胞内情報伝達系に重要な役割をはたすprotein kinase C(PKC)系について検討を行なった。 SLE患者T細胞はPKC活性化物質であるTPAによって、PHA反応性、Con A誘導抑制T細胞が亢進するが、活動期SLEは非活動期ほど著明でない。また、ILー2産生能もTPA刺激で誘導され、PHA,TPAの混合刺激ではさらに強いILー2産生が誘導された。一方、B細胞はTPA刺激によって活動期は、より強く活性化され、SAC,TPA混合刺激によってさらに強く活性化された。B細胞のIgM産生反応はTPA単独、SAC,TPA混合刺激でも非活動期にみられなかったが、活動期は自発的なIgM産生反応をTPAが抑制し、逆にSAC刺激による低下したIgM産生をTPAは影響を与えなかった。 PKC阻害物質であるHー7は(HA 1004を対照薬として)健康人、SLE患者とも病勢のいかんを問わず各種T,B細胞機能を抑制し、その程度には差はなく、ほとんど完全に抑制した。さらに、SLEのリンパ球の機能異常がILー2反応機構の異常と密接に関連しているとされているが、このILー2反応系とPKCとの関連について検討を行なった。SLE患者T細胞のTPA刺激によるILー2レセプタ-(ILー2 R)発現は活動期に低く、TPA刺激によるILー2反応性は病勢に一致していた。B細胞はSAC,TPA混合刺激によって非活動期にのみILー2 Rの発現がみられ、TPA刺激によるILー2反応性は病勢に関係なく、低かった。 以上のごとく、SLE患者リンパ球の重要な機能異常にPKC反応系が関わっていることが示唆された。
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