ガングリオシドは哺乳類の細胞膜に広く存在するglycosphingolipidの一つであり、最近免疫調整因子としての役割を担っていることが注目されいている。我々は、多発性硬化症の動物実験モデルである実験的自己免疫性脳背髄炎(EAE)を用いて、ガングリオシドの効果をin vivoおよびin vitroで検討した。EAEはLewis系ラットをモルモット髄鞘塩基性蛋白(GPMBP)で感作し、作成した。いずれも一定量のガングリオシド(牛全脳ガングリオシド)を、対照群には生理食塩水を12時間毎に皮下注し、同時に臨床神経症状を観察し、点数化した。発症前後で、末梢血および脾細胞のT細胞亜分画をfluoresceuce octivated cell Sorter(FACS)を用いて解析した。また培養液中にガングリオシドを添加し、増殖反応に及ぼす影響を検討した。ガングリオシド投与により、通常型EAEはdose dependentに抑制され、50mg/kg/日投与群の臨床症状は17.9±3.2で対照群の32.4±7.1に対し、有意に抑制された(p<0.05)。この抑制はガングリオシドを感作4日前から感作3日後まで投与した場合にはみられなかった。また、ガングリオシド投与により、細胞投入による受身型EAEも抑制された。GPMBP特異的増殖反応およびConAによる非特異量的増殖反応はガングリオシド添加により著明に抑制されたが、FACSによる末梢血および脾細胞のT細胞亜分画はガングリオシド投与群と対照群との間に有意差はなかった。以上により、ガングリオシドは通常型および受身型EAEの両者を抑制し、感作期に投与した場合にはEAEを抑制しないことが明らかとなった。ガングリオシドはin vitroで培養系に添加した場合にはリンパ球増殖反応を抑制するが、末梢血および脾細胞のT細胞亜分画には影響せず、EAEの効果期で作用を及ぼす機序が示唆される。
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