ガングリオシドは哺乳類の細胞膜に広く存在する糖脂質の一群であり、その免疫調節因子としての役割が注目されている。我々は多発性硬化症(MS)の動物実験モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)をモルモット髄鞘塩基性蛋白(MBP)で感作することにより作成し、ガングリオシドの効果をin vitroおよびin vivoで検討した。EAEにおいてはガングリオシドの投与によりEAEが抑制され、ガングリオシドがILー2を可逆的に競合的に阻害することを見いだした。また、EAEにおいては、炎症局所の脊髄で線溶系酵素活性が著明に亢進しており、臨床症状の程度とよく相関した。ガングリオシドの投与による、これらの線溶系酵素活性も抑制された。次に我々は、細胞移入による受身型EAEを作成しガングリオシドの効果を検討した。donorよりリンパ節細胞を得、MBPで72時間刺激培養し、細胞移入12時間前にガングリオシドを添加し、非添加群と比較検討した。ガングリオシド添加群では、非添加群に比し、発症率、臨床症状共に有意に抑制された。さらに、今回、我々は多発性硬化症患者末梢血中よりILー2を用いて、Tーcell lineを樹立した。Tーcell lineの培養液中にガングリオシドを添加し、非添加群とT細胞亜分画、細胞間接着分子(ICAMー1)の発現、ILー2の産生能を比較検討した。flow cytometryを用いた解 析では、ガングリオシドはT細胞亜分画に影響せず、ガングリオシド添加群、非添加群間に有意差はみられなかった。また、培養液中のILー2活性にも影響を及ぼさず、ガングリオシド添加群、非添加群間に有意差はみられなかった。一方、ICAMー1 expression においてはガングリオシド添加群で減少傾向がみられた。以上よりガングリオシドはT細胞亜分画に影響せず、免疫性炎症反応を抑制する可能性が示唆された。
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