研究概要 |
多発性骨髄腫の経過は多様である。この多様性の背景を明らかにする目的で骨髄腫細胞の細胞生物学的解析を行なった。さらに関連事象との関連性について多角的に検討した.本年度に得られた知見の一部は裏面に記した論文において発表されている. 1.骨髄腫細胞の細胞膜抗原の多様性,とくにmyeloid抗原は形質細胞性白血病と関連することを明らかにした。myeloid抗原陽性形質細胞は感染その他の刺激により末梢血中に遊出し,好中球様の反応を示すことがある 2.myeloid抗原の表現は,化学療法による2次性非リンパ系白血病,MDSとも関連する 3.骨髄腫患者の末梢血中には,骨髄増殖疾患群,例えば慢性骨髄性白血病,慢性好中球性白血病で高率にみられるringed neutrophilsが病期,病型に依存して高率に出現することを証明した。このことは骨髄腫が骨髄増殖疾患と類似の好中球系異常を伴っていることを示している 骨髄腫は幹細胞レベルの異常を示していると想定される(骨髄腫から慢性骨髄性白血病に移行したり,骨髄腫と慢性好中球性白血病の合併は高率であることからも窺われる) 4.アミロイド症の合併は骨髄腫の予後を悪化せしめる.骨髄腫の治療に用いる副腎皮質ホルモンがアミロイド症を誘発ないし促進するとの知見を得た. 5.Bence Jones(BJ)蛋白はアミロイド物質の前駆体である.BJ蛋白の等電点とアミロイド原性は関連し,また単クロ-ン性形質細胞の腫瘍性格とこれにより産生されるBJ蛋白の等電点は関連性を示すことも検討中である。
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