研究課題
I.肺移植後の肺水腫予防における抗酸化剤の有用性について検討。イヌ左肺の3時間温阻血前もしくは再潅流前に、還元型グルタチオン、CoQ10、SOD、vitamine EおよびCを各々阻血肺動脈よりflusing、もしくは静脈内投与し、血流再開後2時間の対側肺動脈閉塞時における動脈血ガス分析、肺血管抵抗、静肺コンプライアンス、肺動脈血活性酸素(O_2^-)産生能を測定した。1)O_2^-産生能はEC液単独によるflushing肺では正常の2倍に亢進したが、抗酸化剤使用群ではO_2^-産生能の亢進はみられなかった。SOD、CoQ10では産生能の低下がみられた。2)肺胞換気能:いずれの薬剤使用群でも再潅流後のPaO_2は低下し、PaCO_2は上昇したが、FiO_21.0換気下にPaO_2は200Torr以上、PaCO_2は400Torr以下を示し対象群に比べ良好な肺胞換気能を示した。3)肺血管抵抗:薬剤投与群は2000dyne.sec.cm-10^5以上に上昇し対象群より高値を示す傾向にあった。4)静肺コンプライアンス:いずれの薬剤投与群も、30ml/cmH_2O以下に低下した。以上よりいずれの抗酸化剤も肺血管抵抗の上昇、静肺コンプライアンスの低下を抑止することはできず、3時間温阻血肺の再潅流後の肺水腫の防止に有用であるとの証拠は得られなかったが、阻血肺の酸素化能、肺胞換気能は良好に保持されることが判った。II.保存肺の肺水腫発生におよぼす好中球の影響について検討。イヌ心肺をUW液でflushing後摘出し、4℃24時間単純浸漬冷却保存後、ロ-ラ-ポンプを用いて全血もしくは白血球除去血で左肺を2時間潅流した。白血球除去血潅流群の肺血管抵抗は、全血潅流群に比べ高値を示す傾向がみられたが、PaO_2、PaCO_2、静肺コンプライアンス、湿乾燥重量法による肺血管外水分量は両群に差を認めなかった。従って保存液としてUW液を用いた場合には白血球は保存肺の血流再開後の肺水腫の発生に重大な影響を及ぼさないことが判った。
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